コロナ禍のペルー留学

― 私の留学体験記 from サン・マルティン・デ・ポレス大学 ―
留学期間:2020年4月-2021年3月

 私はUSMP(Universidad de San Martín de Porres)への交換留学で、2020年をペルーで過ごしました。ペルーでの生活は渡航前に思い描いていた理想の留学像を見事に裏切ることとなり、ある意味では誰も経験したことのないような一年間を送りました。
 太平洋を渡り、赤道を超え、30時間超もの遠路の末にたどり着いたペルーでは到着1か月を待たずしてCOVID-19によるロックダウンが発表され、私の留学生活はそのほとんどの時間を自宅の中で過ごすこととなりました。大学の講義は全面リモート授業となり、一度も顔を合わせたことのないクラスメートと画面一枚で勉学に励む毎日です。不幸中の幸いか、授業の録画や資料は学生用のウエブサイト上にアップロードされ、いつでも見返すことができたため、勉強には多くの時間をとることができました。コロナ禍の数少ない利点です。
USMPではすべての講義でグループワークがありました。私の拙いスペイン語ではクラスメートの助けが必要でしたが、電波を介した会話ではコミュニケーションにどうしても拭いきれない難しさがありました。くわえて不運なことには、語学学校もまたこのコロナ禍で外国人の学生数不足となり授業がキャンセルされました。私の留学の大きな目標の一つである「スペイン語の習得」に満足いくレベルを達成できなかった要因の一つが、この不運のせいだと言い訳しておきます。
 そんな毎日でも私のペルー留学に大いなる価値を与えてくれたのは、ほかでもないステイ先のホストファミリーでした。私がお世話になったお宅はいわゆる日系のご家族です。朝起きてホストマザー(普段はママと呼んでいました)に出くわすと、頬にキスをするペルー様式を則りながらも、言葉では「おはようございます」と日本語で挨拶をするなどと、その生活習慣は少し奇妙で、とても素敵な体験でした。そして話には聞いていたものの、日系コミュニティの広さとそのつながりの強さには驚嘆させられました。コロナ禍において私がペルーで多くの貴重な体験をできたのもこの日系コミュニティのつながりの強さのおかげにほかなりません。例えば12月にペルー国内での移動規制が緩和されていたため、クスコへの一人旅をしましたが、その際にはチケット手配や現地についての情報収集をご近所の日系の方に助けていただきました。本当にありがとうございました。
 実は日系の方々はペルーの発展に大きく貢献した歴史があります。例えば、世界遺産である天空都市遺跡のマチュピチュですが、訪れるには遺跡の手前でAguas Calientes(別称マチュピチュ村)という場所を中継します。その村を開いた人こそ日本人移民の方で、初代村長として今でも現地ではその名前がよく知られています。私がクスコへ訪れた際には、その方のご子女の方が営むゲストハウスに宿泊させていただきました。ご友人やご親戚ともお話しすることができ、言うまでもなく有意義で貴重な勉強となりました。
 2020年はペルーにとって壮絶な一年でした。コロナウイルスによるあらゆる国家運営への打撃は凄まじく、それに追随するように政治問題などが明るみに出てくることで、犯罪の増加や暴力的なデモ行進なども数多く起きた年でした。
 しかし先ほど述べたような、この素敵な人のつながりのおかげでこの渦中であってもペルーでしかできないことを多く経験できました。そして、世の中がどのような状況であろうとも、人とのつながりこそが自分を助けてくれるものなのだと、この留学で一番の学びを得ることができました。
 最後にこの留学でお世話になりました方々に深く感謝の意を送るとともに、皆様のご健康を強くお祈りいたします。

2021年2月 若木 優作(国際文化専攻3年次、北海道別海高校出身)



ステイ先の皆さんと


雨季のマチュピチュ遺跡