国際文化学科二本松ゼミ(伝承文学)の学生が編著した書籍『春野のむかし語り』が刊行されました

文化政策学部国際文化学科の二本松康宏ゼミ(伝承文学)では、浜松市天竜区の中山間地域で昔話や伝説を採録し、書籍として刊行する活動に取り組んでいます。『水窪のむかしばなし』(2014年度)、『みさくぼの民話』(2015年度)、『みさくぼの伝説と昔話』(2016年度)、『たつやまの民話』(2017年度)、『春野のむかしばなし』(2018年度)、『春野の昔話と伝説』(2019年度)、『北遠の災害伝承―語り継がれたハザードマップ—』(2020年度)、『春野の山のふしぎな話』(2021年度)、『春野の民話』(2022年度)と刊行を続け、2023年度の『春野のむかし語り』で10冊目になりました。

今回の『春野のむかし語り』を編纂したのは、二本松ゼミに所属する小鍋未羽さん、佐藤菜々美さん、藤井七海さん、望月花鈴さんの4名(いずれも国際文化学科4年)です。
2023年5月から2024年2月までに計23回の調査を重ね、83名の語り手から昔話、伝説、世間話、言い伝えなど合計270話を採録。そのなかから精選された昔話21話、伝説22話、世間話 20 話、言い伝え21話、合計84話が「方言のまま」「語りのまま」に『春野のむかし語り』に掲載されています。それぞれの集落の「伝承背景」を解説・考証した「地域解説」も学生たちの研究成果です。


4月11日には書籍を編纂した学生4名が浜松市市役所を訪ね、中野祐介浜松市長に調査を報告し、献本しました。学生たちが、それぞれの思い出や調査を通しての感想などを述べると、中野市長からは出版のお祝いとともに学生一人一人に調査へのねぎらいと励まし、今後の調査への期待の言葉をいただきました。

また、同日には横山俊夫学長にも調査を報告し、献本しました。横山学長はまず書籍に掲載された語り手たちの写真に注目し、「こういう笑顔は信頼関係がないとなかなか撮れない」と指摘。学生たちは「語り手の声が聞こえてくるような仕上がりを目指した」「私たちが訪ねるたびに手作りのお菓子を用意して待っていてくださった」「解説の執筆や編集のなかでつらいときには、語り手たちの顔を思い出して頑張った」「仲間たちや、地域の人たちの温かさに支えられた」とそれぞれの思いを語りました。




二本松康宏教授からのコメント
地域に伝えられた「伝説」、家庭の中で語り継がれてきた「昔話」、ごく身近なコミュニティのなかでまことしやかに語られた「世間話」などは、いずれも本来は「民間口承文化財」と呼ばれるべき価値を持つものです。それは地域と家庭に受け継がれた「心と記憶の文化遺産」と言えます。

近年の極端な高齢化と過疎化によって、そうした民話の伝承は風前の灯火ともいえる状況にあります。それは伝承や伝統が途絶えるというだけではなく、それを語り継いできた地域、家庭、コミュニティの断絶や消滅を意味します。

私たちのゼミの活動理念の一つに「学術をもって地域に貢献する」があります。民話を採録するということは、「生活の誇り」を記録するということ。ただ昔話や伝説を本にまとめるのではなく、その土地で暮らす人たちに「自分たちが語り継いできた話に、実はこんな意味があったのか」「自分たちが暮らすこの土地に、そんな背景があったんだ」と再認識していただけるような書籍の刊行を目指しました。

書籍情報


『春野のむかし語り』
監修:二本松康宏
編著:小鍋未羽、佐藤菜々美、藤井七海、望月花鈴
発行:三弥井書店
発行日:2024年3月21日
ISBN 978-4-8382-3415-8
定価:1200円(税抜)
表紙画:川嶋結麻(本学国際文化学科卒業生)

書籍は全国の書店をはじめ、各オンラインショップで購入可能です。