大学の特長、沿革・歴史

公立大学法人公立はこだて未来大学 理事長・学長
片桐 恭弘(かたぎり やすひろ)

■「新たな知の創造拠点」として
 本学からは、まちを挟んで函館山が遠望でき、その彼方にゆるぎのない水平線を望むことができます。縄文時代に遡る人々の長い営み、幕末から明治への交易・戦争・開港という変動、そして北海道開拓のゲートウェイという函館の歩みはこの地ならではの歴史文化を形成し、さらに時代を重ねるなかで人々は固有の地域資源を育んできました。この美しく豊かな地に立地する本学もまた、未知のフィールドを拓く先駆者でありたいと思います。本学は、函館圏・道南圏に根ざす「新たな知の創造拠点」として、人々がより良く生きるための持続的な社会の仕組みづくりを追求してまいります。

■「社会をデザインする」は、使命達成の道しるべ
 公立大学である本学が地域の人々に提供すべき価値とは、社会から誇りとされ、頼られ、愛される大学であることです。そのために必要とされる具体的貢献が、社会に寄与する人材の育成、地域の課題解決、産業振興、文化振興です。世界的に情報教育の重要性が認識されるいま、本学は人間生活のあらゆる分野に関与する情報科学を根幹とし、よりよい社会の仕組みづくり=「社会をデザインする」という理念のもと、独自の教育と研究を展開しています。

■新たな知の創造のための知的環境
 教員陣は、専門領域のみならず周辺分野や地域社会とのコラボレーションを積極的に志向しています。企業出身の教員も多く、高いファカルティ・レベルを備え、多様な専門領域に秀でているのも本学の特徴です。さらには教員同士・教員と学生のオープンマインドな距離感、開放的で透明性の高い建物、これらが社会に開かれたオープンな学風と自律的な問題解決力・自発的な学び・コミュニケーションを通じた協調性を育む知的環境を構成しています。

■実践フィールドは未知への誘導路
 システム情報科学はICT、デザイン、複雑系、人工知能を融合して、世界をシステムとして認識しながら、現代社会の現実の問題に取り組むための学問です。本学における研究・教育の実践フィールドは、函館圏という実際のまちを対象としています。開学以来の地域に根ざした数々の実践は、医療・観光・交通・海洋などの分野で確かな実績として社会を動かし始めています。

■根ざすは地域、目指すは世界
 「Think Globally,Act Locally(地球規模で考え、足元から行動しよう)」という標語があります。ネットワークの発達した現代社会は世界と直結しています。しかし、社会の抱える課題に真摯に取り組むためには、まず地域の「固有性」に根ざした活動を突き詰めることが近道になります。公立はこだて未来大学は、地域貢献と世界に向けた情報発信を両輪とし、知の創造拠点として社会に寄与する未来を拓いてまいります。
■建学の理念
公立はこだて未来大学は、「人間」と「科学」が調和した社会の形成を願い、深い知性と豊かな人間性を備えた創造性の高い人材を育成するとともに、知的・文化的・国際的な交流拠点として地域社会と連携し、学術・文化・産業の振興に貢献することを建学の理念としています。

公立はこだて未来大学は、函館圏公立大学広域連合を設立母体として、地域の志と熱意を糧に2000年に開学しました。函館は、日本がはじめて近代の世界に向けて開いた港のひとつとして、ユニークな歴史をもつ港湾都市です。幕府の箱館奉行所が設けた諸術調所は、日本最初の西洋科学技術の教育機関であり、さまざまな成果や人材を生み出しました。このまちの人々は、外国の異文化をどん欲に吸収しながら、新しい科学技術や文化、産業、そして教育などの分野で独自の取り組みを重ねてきました。

道南圏唯一の公立大学である公立はこだて未来大学は、情報系単科大学として、20世紀末から爆発的に進展をつづける情報社会のグローバル化に呼応しながら、システム情報科学を基軸にした人材の育成と研究の未来、そして地域の未来を拓くことを針路としています。

■システム情報科学の創成
本学では開学以来、システム情報科学を独自の学術領域として創成することを目指してきました。本学が目指すシステム情報科学は、20世紀の情報科学の発展を礎に、21世紀に必要とされる「人間を中心とする」新たな情報科学の総合分野を創成しようとするものです。情報科学、情報工学といわれる専門分野は、わずか半世紀ほど前に確立した比較的新しい領域です。20世紀後半の情報技術の爆発的発展を背景に、どちらかといえば「技術を中心とする」学問分野として発展してきました。

本学の目指すシステム情報科学は、従来の情報技術の可能性を、さらにわたしたちを取り巻く包括的な現実世界—人間システム、社会システム、自然システム、そして人工物システムのすべてが絡み合った世界へと拡張していくことに挑戦しています。世界は無数の要素が絡み合った複雑なシステムとして存在しています。自然も、社会も、人間が作り出した人工物も、現実の世界ではすべてが渾然一体と繋がり合ったシステムであり、ひとつの環境世界を構成しています。—例えば、ビッグデータといわれる新たな分析対象は、情報ネットワークで繋がった莫大なデータを、ひとつの対象として取り扱おうというものです。近年の気象予報データの精緻化なども、天候という自然現象をひと繋がりのシステムとして分析する手法の進化により徐々に実現してきました。

システム情報科学では、複雑な現実世界をできるだけあるがままの対象として取り扱い、数理科学的手法、デザイン的手法、社会科学的手法などを取り入れながら、システムとして表現し制御することを重視しています。本学の70名の教員、そして学生たちが、科学とデザインのアプローチを融合し、対象世界をシステムとして見据え、人間と技術が調和した社会の実現へ貢献すべく、日々活動を展開しています。

■オープンスペース、オープンマインド
20世紀最後の年、2000年に開学した公立はこだて未来大学は、20世紀の科学技術や学芸・文化が達成した実りの上に、20世紀とは異なる未来志向の研究と教育を創成するための場として構想され、設立されました。この進取の気風と実践のベースとなっているのが、「オープンスペース、オープンマインド」という精神です。

20世紀の教育は、教える教員から教えられる学生へ、知識を一方的に流し込むスタイルでした。また教育とは、決められた教室で、決められた時間に行われる講義を意味しました。わたしたちの構想は、まずこのスタイルを変革することから始まりました。教員と学生のあいだに双方向の学びの回路を創る、学生と学生が共に学び合う。学生がキャンパスの中にいるあいだは、すべてが学びの時間であり、すべてが学びの空間である。
—こうした発想のもとで、本学は設計されました。

5階分を吹き抜けにした象徴的な大空間(スタジオと呼びます)は、そこにいる全員に1つの空間を共有する感覚をもたせ、学びの共同体としての一体感を生み出します。すべての機能がひとつの大きな建物空間の中にレイアウトされ、教員の研究室、講義室、図書館、事務室などの部屋はすべて透明なガラス張りです。誰もがいま学内で何が起こっているのかを、一望のうちに知ることになります。そしてこの空間と一体となったカリキュラムやプログラムのもと、グループワークやディスカッション、プログラミング、デザイン、ものづくり、コミュニケーション、プレゼンテーションなど様々な活動が、あちらこちらで思い思いに繰り広げられます。オープンな空間と、オープンな学びが、公立はこだて未来大学のすべての活動の根源にあります。 ※詳細は下記URLをご覧ください。
https://www.fun.ac.jp/advanced-education
公立はこだて未来大学は、研究室や教室に閉じこもることなく「街に出る」研究・教育活動をモットーとしてきました。情報、デザイン、複雑系、知能といった領域の学問は、いずれも社会実践のただ中でこそ新しい発見があり、生き生きと学ぶことができる性格をもっています。街に出て、地域社会の問題を発見し、問題を取り巻く固有の環境条件を理解し、解決策をユーザや市民と共に考え、システムとしてかたちにしていく—このような現場志向の教育や研究のスタイルは、そのまま社会をデザインする活動へとつながります。

例えば、2013年に函館市電開業百周年という節目を迎えた函館市企業局交通部との連携で、交通部シンボルマークや車両番号書体のデザインリニューアル、百周年記念の「百」のロゴとフラッグのデザインなどを、本学の教員や学生たちが実現させました。

大学ならではの連携の仕組みと専門性を生かして「社会をデザインする」試みを、地域社会との持続的なかかわり合いのなかでさまざまに展開しています。

■重点研究領域の紹介
本学では教員間のさまざまな学際的共同研究が行われています。そのなかでも、本学らしい強みを生かして、時代の要請や社会の要請、そして地域の要請に応えていくべきテーマとして、次の3つの重点研究領域を掲げています。それぞれの領域の頭文字「M」から、「3つのMIT」と呼んでいます。

Mobile(モバイル) IT
情報技術は社会を変える。この言葉が実感をもって受け止められるようになった背景には、携帯電話やスマートフォン、ウエアラブルコンピュータなどの急速な普及があり、さらにその背後には、知的な処理ができる計算回路の超小型化・高集積化と、ビッグデータといわれるような社会全体の膨大なデータのネットワーク化があります。「モバイルIT」は、情報技術の進化を新しい社会のサービスと結びつけて、市民ひとりひとりが持ち歩くことができる21世紀のモバイルITインフラを構築するための研究開発に取り組むものです。政府によるトップダウンのインフラ構築の時代は終わりました。市民=ユーザの声に耳を傾け、寄り添い、カスタマイズされたサービスを届けることが求められています。モバイルITは、超高齢社会を迎えた地域社会を、情報とネットワークの技術が可能にする21世紀の「スマートシティ」へと再生する取り組みです。

中心的な研究領域の1つとして、2012年度からモバイルITで公共交通の新しいかたちを追求するプロジェクトをスタートさせました。学内に「スマートシティはこだて・ラボ」を設置するとともに、函館地域での社会実践を推進するための組織として「NPOスマートシティはこだて」(代表: 松原仁・本学教授)を設立。2013年秋には、函館市を実証実験フィールドとして、世界で初めての全自動制御によるフルデマンド公共交通システム「SAVS(Smart Access Vehicle System)」の運用実験に成功しています。

Marine(マリン) IT
マリンITは、水産・海洋分野とITを融合するための取り組みで、世界で唯一、本学が掲げるきわめてユニークな研究領域です。海という自然を相手に、季節や時間、天候によって変化し続けるようすや、水産物の資源量を正しく捉えるための技術の開発と社会実践に取り組んでいます。

例えば、水深ごとの水温や潮流などを遠隔で自動観測できるユビキタスブイシステムでは、漁業や養殖を営む事業者がみずから海に出ることなく、手元のスマートフォンやタブレットでリアルタイムにデータを確認できる画期的な操業環境を実現しました。

また、船の位置情報と魚群の情報を漁船同士で共有しながら漁獲量をコントロールすることで乱獲を防ぎ、適正な資源管理にもとづいた将来世代にわたる持続可能な漁業が営めます。従来は船内の黒板や海図、無線電話を使ってアナログで行われていた資源評価作業をデジタル化して、タブレットとGPS(衛星測位情報システム)で置き換えることにより、より合理的で快適な操業を可能にしました。加えて、累積したデータを呼び出して操業の参考にしたり、過去のデータを分析して資源状況を把握するなど、従来は水産試験場でしか出来なかったような分析が漁業者側でもできるようになり、主体的で戦略的な取り組みを可能にしています。地域の事業者と連携した取り組みは、道内の留萌市や福島町をはじめ日本各地へ、また海外では韓国やインドネシア(バリ島)へと広がっています。

Medical(メディカル) IT
社会に潜在する課題やニーズをITによって日の目を当てて解決する取り組みは、地域医療の現場でも進められています。本学では地域の病院や介護施設などと連携した教育・研究の取り組みを2003年から持続的に展開、メディカルITと名付け重点領域の1つに位置づけています。

超高齢社会に突入した日本の地域社会では、「人はどう良く生きられるか」という課題に対して、医療や介護の現場、あるいは市民ひとりひとりがどう向き合うかが鍵を握ります。本学では2005年度のプロジェクト学習を通じて、患者視点での医療情報システムを産学連携により提案した取り組みが、地域医療に新しいコミュニケーションの可能性を開いたとしてグッドデザイン賞を受賞するなど、高い評価を受けています。最近では、長期入院を余儀なくされるような乳幼児患者とそのご家族をフォローする入院マニュアルの作成や、認知症の予防や症状緩和につながる高齢者との語り合い・ライフヒストリの傾聴を通じたケア、健康・医療情報のライフログ化など、多岐にわたるテーマに教員と学生らが一体となって取り組んでいます。

また、医用情報工学の最先端領域の研究でも独自性の高い取り組みを行っています。藤野雄一教授、佐藤生馬助教らが中心となって、医師の負担低減や患者のQOL向上に貢献するための様々な技術—在宅医療システム、遠隔診断システム、非侵襲型センシングシステム、手術ナビゲーションシステム,手術ロボット、手術トレーニングシステムなどの研究開発に取り組んでいるほか、多数の教員が、様々な領域からのアプローチでメディカルITに参画しています。
・1997年度(平成9年度)
函館市、上磯町、大野町、七飯町、戸井町の1市4町(現在は合併により、函館市、北斗市、七飯町の2市1町)で組織する函館圏公立大学広域連合を設置

・1998年度(平成10年度)
校舎建築工事着工

・1999年度(平成11年度)
公立はこだて未来大学設置認可

・2000年度(平成12年度)
公立はこだて未来大学開学
[システム情報科学部]
情報アーキテクチャ学科
複雑系科学科

・2001年度(平成13年度)
校舎(本部棟)が第26回北海道建築賞を受賞
校舎(本部棟)が第14回北海道赤レンガ建築賞を受賞

・2002年度(平成14年度)
校舎(本部棟)が日本建築学会賞(作品)を受賞
課題解決型学習の先駆けとなる「プロジェクト学習」スタート
公立はこだて未来大学大学院設置認可

・2003年度(平成15年度)
公立はこだて未来大学大学院開設

・2004年度(平成16年度)
地域連携、産学官連携等を組織的に支援する共同研究センターを開設
校舎(本部棟)が第9回公共建築賞(生活施設部門)国土交通大臣表彰を受賞

・2005年度(平成17年度)
研究棟建設工事竣工
東京サテライトオフィス(秋葉原)開設

・2006年度
(平成18年度)
プロジェクト学習の教育構想が文部科学省の「特色ある大学教育支援プログラム」に採択

・2007年度(平成19年度)
公立大学法人設置認可
函館市高等教育機関連携推進協議会(平成20年4月からキャンパス・コンソーシアム函館に名称変更)の設立に参加

・2008年度(平成20年度)
公立大学法人を設立
メタ学習センターを設置

・2009年度(平成21年度)
地域ネットワーク支援事業として「はこだて国際科学祭」を開催(毎年開催)

・2010年度(平成22年度)
開学10周年記念式典を挙行
複雑系科学科と情報アーキテクチャ学科を情報アーキテクチャ学科と複雑系知能学科に再編
大学・大学院一貫(6年制)の高度ICTコースを開設

・2012年度(平成24年度)
FUNコラボラティブ・ラボラトリ制度を創設
共同研究センターを社会連携センターに発展改組
メタ学習ラボの活動がスタート

・2013年度(平成25年度)
全国15大学との連携による「分野・地域を超えた実践的教育恊働ネットワーク(enPiT)」事業スタート

・2014年度(平成26年度)
公立はこだて未来大学出版会による出版活動スタート
東京虎ノ門にサテライト・オフィスを移設

・2015年度(平成27年度)
情報システムデザインセンターを設置

・2017年度(平成29年度)
未来AI研究センターを設置