大学の特長

「共考」と「協創」

学長 小川 智

 岩手大学は、これまでもこれからもより良い未来を創造する高等教育研究機関として「地域の知の府」そして「知識創造の場」としてあり続けることが大切です。そのためには岩手大学が経営面でも教学面でも健全に運営され、教育・研究・社会貢献の各領域において地域に頼られる、そして尊敬され愛される存在であることが必要です。私の目指す大学像は、学生、教職員との共考と協創(共に考え、協力して創る)であり、10年後を見据えた「岩手大学ビジョン2030」を策定し岩手大学総体としてその実現を目指します。

 さて、より良い未来を創造するONLY ONEの大学となるには、今こそ学生、教職員がともに成長できる人づくり、学生力、教員力、そして職員力を高めるしくみが重要です。

 有為な人材を社会に輩出するという観点からの学生づくりでは、学問の教授に加え学生が社会の構成員となったときに自己実現できるような、学生の成長を促し多文化共生社会に対応できるためのリテラシーを養う教育が必要です。そのためには、社会との関わりの中で学ぶことを含めた多様な学習環境を整備するとともに、学生、教職員が相互に刺激し合う「学修」「学び」をアカデミックコアとして位置付け、学生が学びたいことが学べる教育カリキュラムを充実すべきと考えています。加えて丁寧できめ細やかな学びのコーディネーションを、現在実施している教育におけるポートフォリオ(アイフォリオ)や教学IR(インスティテューショナル・リサーチ)を効果的に連携させることにより実現し、キャリアサポート体制を充実していきたいと考えています。また教養教育のみならず、学部、大学院における専門教育にもこの考え方を展開することにより、国際社会でも活躍できるグローバル化対応能力を身に着けた高度専門職業人の育成に繋げていきたいと考えています。

 次に教員力を備えた人づくりでは、自由で優れた研究が実施できる環境づくりが必要です。教員の自由な発想に基づき長期的な視野で真理の探究を行うことができる知識創造の場としての大学であり続けたいと考えます。そのために教職協働により極力組織運営に供する時間を削減し、やりたい研究に打ち込める時間の確保が重要です。さらにサポートとして、UEA(University Education Administrator)、URA(University Research Administrator)の拡充や施設整備、設備更新等にも努めていきます。また未来へ投資する大学であるべく、大型の外部資金等による先導的研究への支援も強化していきます。一方、以上の学生力、教員力を高めるためにも、大学運営を主体的に担う職員の職員力を高める人づくりも本学が目指す「より良い未来を創造する高等教育研究機関」の実現には必要不可欠です。

 また本学の地域貢献は、先駆的な取組として国内外から評価されています。その基盤があったからこそ東日本大震災復興に大きく貢献し、国からも地域からも高く評価されてきました。今後も東日本大震災を経験した地方大学として震災復興や社会貢献の核ともいえる地域貢献を継続することは当然ですが、高等教育研究機関としての最大の任務である教育と研究の両面において、すなわち教育面での成果により地域社会で活躍する学生の輩出、研究面での成果により地域社会や地域企業が抱える課題を解決し、大学と地域がお互いにメリットがあるような関係の構築が必要と考えています。そのためにも大学自らがイニシアチブをとって地域の知の拠点となるべく主体的に行動することが肝要であり、法人となったことによる裁量度を活かし社会のニーズに柔軟にそして即座に対応できる体制を強化していきます。

目標

 岩手大学は、真理を探究する教育研究の場として、学術文化を創造しつつ、幅広く深い教養と高い専門性を備えた人材を育成することを目指すとともに、社会に開かれた大学として、その教育研究の成果をもとに地域社会と国際社会の文化の向上と発展に貢献することを目指しています。

教育目標

 岩手大学は、教養教育と専門教育の調和を基本として、次のような資質を兼ね備えた人材の育成を目指す。
●幅広く深い教養と総合的な判断力を合わせ持つ豊かな人間性
●基礎的な学問的素養に裏打ちされた専門的能力
●環境問題をはじめとする複合的な人類的諸課題に対する基礎的な理解力
●地域に対する理解とグローバル化に見合う国際理解力
●柔軟な課題探求能力と高い倫理性

研究目標

 岩手大学は、基礎研究と応用研究の調和を基本として、これまで築いてきた学問的な伝統に基づく次のような取り組みにより、学術文化の創造を目指す。
●人類的諸課題を視野に入れた、人文・社会・自然の各分野にわたる基礎研究の推進
●国際水準をめざす先端的な専門研究の展開
●独創的で高度な学際的研究の展開
●地域社会との連携による新たな研究分野の創出

社会貢献目標

 岩手大学は、教育研究の成果の社会的な還元を基本として、次のような取り組みを通じて地域社会の文化の向上と国際社会の発展のための貢献を目指す。
●地域社会における高等教育の享受のための機会の拡大と生涯学習に資する場や学術情報の提供
●地域社会のニーズに応える地域振興への参画
●地域社会と国際社会の文化的交流のための取り組み