数学

 数学は、自然科学の基底的一分野として、人間文化の様々な領域で活用される学問であり、科学技術の発展に貢献するだけでなく、社会事象を客観的に表現し予測するための手段ともなっています。そのため、東京大学の学部前期課程(1、2年生)では、理科各類の全学生が解析・代数を必修科目として履修し、文科各類の学生も高度な数学の授業科目を履修できるカリキュラムが用意されています。

 本学に入学しようとする皆さんは、入学前に、高等学校学習指導要領に基づく基本的な数学の知識と技法を習得しておくことはもちろんのことですが、将来、数学を十分に活用できる能力を身につけるために、次に述べるような総合的な数学力を養うための学習を心掛けてください。

1)数学的に思考する力
 様々な問題を数学で扱うには、問題の本質を数学的な考え方で把握・整理し、それらを数学の概念を用いて定式化する力が必要となります。このような「数学的に問題を捉える能力」は、単に定理・公式について多くの知識を持っていることや、それを用いて問題を解く技法に習熟していることとは違います。そこで求められている力は、目の前の問題から見かけ上の枝葉を取り払って数理としての本質を抽出する力、すなわち数学的な読解力です。本学の入学試験においては、高等学校学習指導要領の範囲を超えた数学の知識や技術が要求されることはありません。そのような知識・技術よりも、「数学的に考える」ことに重点が置かれています。

2)数学的に表現する力
 数学的に問題を解くことは、単に数式を用い、計算をして解答にたどり着くことではありません。どのような考え方に沿って問題を解決したかを、数学的に正しい表現を用いて論理的に説明することです。入学試験においても、自分の考えた道筋を他者が明確に理解できるように「数学的に表現する力」が重要視されます。普段の学習では、解答を導くだけでなく、解答に至る道筋を論理的かつ簡潔に表現する訓練を十分に積んでください。

3)総合的な数学力
 数学を用いて様々な課題を解決するためには、数学を「言葉」や「道具」として自在に活用できる能力が要求されますが、同時に、幅広い分野の知識・技術を統合して「総合的に問題を捉える力」が不可欠です。入学試験では、数学的な思考力・表現力・総合力がバランスよく身についているかどうかを判断します。