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学長のメッセージ
金沢美術工芸大学
学長 山崎 剛


 私たちのキャンパスには正門というものがありません。本館の正面に向かって校地を眺めると、入り口としての門も、内と外を隔てるフェンスも無いことに気づくでしょう。けやきの木々に彩られた校庭を、ときおり近所の保育園の園児たちが乗り合いカートで散策しています。校舎に入ると廊下の壁にピクチャーレールがあり、まるで部屋のように広い廊下が展示室の役割を果たしていることに気づくでしょう。ここで学生が作品を展示し、教員による講評が行われ、また廊下という空間ゆえに人が通り、不特定多数の他者が作品を目にします。

 私たちのキャンパスは開かれています。その一方で、学生たちの日々の学びは、良い意味で、正しく閉じられた環境の中で行われています。素材を知り、技を磨くためには、自己を見つめ自己と向き合うことが大切だからです。学びは、習うこと或いは倣うことに始まり、私たちはそれを勉めて強いるでしょう。絵画には絵画の、彫刻には彫刻の、工芸には工芸の、デザインにはデザインの、芸術学には芸術学の、学ぶべき基礎が何よりも大切だからです。大学での学びは、社会的な有用性といったものから一定の距離を保ち、基礎力を磨く貴重な時間です。

 私たちが考える芸術創造の自由、一人ひとりの世界観の構築はその先にひろがっています。だから大学憲章に、「素材を知り、技を磨き、現代に生きる表現に高めるべく「ものづくりの精神」を尊び、幅広い人間性に裏付けられた理論と技術の彫琢をとおして、芸術が社会に果たす役割を自ら探し行動する人材を育成する」と謳うのです。そして目まぐるしく変化する社会において、芸術が社会に果たす役割を自ら探し行動すること、更には自らの世界観に基づき継続すること、その芸術に生きる力を育みたいと、私たちは心より願っています。

 ともに学びましょう。けやきの木々に彩られたキャンパスで。