音楽学部
学科概要
学科・専攻概要
作曲科は、1931(昭和6)年に東京藝術大学音楽学部の前身である東京音楽学校に設置されて以来、ヨーロッパ近代音楽の表現法と技法の研究・教授を行ってきました。1949(昭和24)年の新制大学への移行後も、ヨーロッパの伝統的音楽理論の研究と、戦後の新たな創作様式の総合のうえに教育研究活動を展開することによって、日本における音楽創造の中核としての機能を担ってきました。
学科・専攻概要
本学における声楽の始まりは、音楽取調掛の「唱歌伝習」にさかのぼり、東京音楽学校時代の1900(明治33)年、声楽の専門家の育成を目指す「本科声楽部」が置かれました。本学声楽科はこのような伝統を継承しつつ、現代に求められる声楽家を育成しようとするものです。音楽学部においては、声楽家としての基礎的技術と知識を教授し、優れた声楽家としてだけではなく、智と人間性にも優れた人材を育成することを教育理念としています。演奏家としての国際性と音楽の果たす役割の重要性を認識しつつ、自らの音楽演奏行為を完成させ、心豊かな演奏を通して広く社会に貢献することのできる人間に育って欲しいと願うものです。ピアノ
学科・専攻概要
ピアノ専攻は、東京音楽学校創立当初から西洋音楽の吸収、国内への広い普及を目指し、更に世界に向けての活躍のレベルを目標に歴史を積み重ね、多くの優れた人材を輩出してきました。近年では殊に、全世界規模での本学の存在が注目され、本専攻も国内外で活躍できるトップレベルの人材養成を目標とした専攻であることを期待される状況です。そのような中で、自由な発想のもと、伝統と進取を重んじながら、若い才能が大きな花を咲かせられるように、また人間性豊かな芸術家として歩めるよう、如何にサポートできるか、模索しつつ努力しています。オルガン
学科・専攻概要
オルガン専攻は、音楽学部発足と同時に開設され、ルネッサンス期から現代まで約700年にわたる幅広いレパートリーを学んでいます。我が国の洋楽導入とともに取り入れられたオルガンは、本学の前身である音楽取調掛でも「風琴」の名で伝習に用いられ、東京音楽学校時代には明治33年以降、オルガン専門の枠が設けられました。オルガンは主として欧州で教会の建物に付随して建造されてきた楽器であるため、オルガン演奏技術の習得と並行して、作品の書かれた地域や時代の事情を反映した建造様式と、各時代の作曲様式ならびに演奏習慣などを同時に学習しなければなりません。本学には、クオリティの高い、建造様式の異なる3つのレッスン楽器、ならびに小規模の練習楽器が4台備えられており、幅広いレパートリーを習得するための環境が充実しています。弦楽
学科・専攻概要
器楽科弦楽専攻は本学でも長い歴史を持っています。本学における弦楽をさかのぼれば、1881(明治14)年2月、お雇い外国人L.W.メーソンの注文により、ボストンから「バイヲリン」「ビヲラ」「ビヲロンセロ」「ダブルベイス」があわせて10挺到着し、音楽取調掛に備え付けられたことに始まります。東京音楽学校時代以降、日本の音楽界を支える数多くの優秀な演奏家を輩出してきました。これまで主にソリストのレパートリーを中心に教育が行われてきましたが、近年は弦楽奏者として必須のアンサンブル能力を身につけるための教育にも力を入れています。
弦楽専攻にはヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、コントラバス、ハープの5つの楽器種があります。
管楽・打楽
学科・専攻概要
日本における管楽器の歴史をひもとくと、管楽器は1897(明治30)年頃から宮内省(当時の名称:宮内省式部職雅楽部)の伶人を中心にフルート、オーボエ、クラリネット、ホルン、コルネット等が教授されていたそうです。軍楽としての管楽器の伝習は、明治初期より陸・海軍軍楽隊において開始されましたが、唱歌教育の実施を急務として始まった本学では、むしろ声楽・鍵盤楽器・弦楽器が管楽器よりも優先されていました。1931(昭和6)年プリングスハイム着任後は管楽器の強化が図られ、1935(昭和10)年には生徒吹奏楽団も新設され、1936年にはホルンのW.シュレーターが着任しました。しかし、演奏会に際しては、金管楽器奏者の不足を補うため、海軍軍楽隊が加わることが常で、5度にわたるマーラーの日本初演も海軍軍楽隊とともに行われました。
東京音楽学校の管楽器専攻第1回生は1935(昭和10)年に予科に入学した3名で、フルート、オーボエ、トロンボーンを専攻しました。オーケストラに必要な管楽器の専任教師が揃ったのは、1949(昭和24)年の東京藝術大学発足以降になります。
現在、管楽器専攻はフルート、オーボエ、クラリネット、ファゴット、サクソフォーン、ホルン、トランペット、トロンボーン、ユーフォニアム及びチューバと10種の楽器に分かれ、打楽器はティンパニーを主にパーカッション及びマリンバアンサンブルを通して、すべての打楽器に精通し、それぞれの専攻を通して、芸術家として高い人格と感性あふれる人材を育てることを目的としています。
室内楽
学科・専攻概要
本学における室内楽教育の歴史は古く、1900(明治33)年、東京音楽学校研究科に週2回「合奏練習」の時間が設けられて以来、「室楽」「器楽合奏」などの名称でカリキュラムに取り入れられてきました。室内楽講座の前身は1964(昭和39)年に設置されたアンサンブル研究室で、同年旧奏楽堂で室内楽研究演奏会が開催されました。その後、1972(昭和47)年に設置された室内楽合奏講座を経て、1978(昭和53)年に、より充実したアンサンブル教育をめざして現在の室内楽講座が開設されました。また、室内楽定期演奏会は、1974(昭和49)年11月に第1回が開催されて以来、2009(平成21年)2月で35回を数え、本学で開催されるコンサートの中核的存在となっています。室内楽講座では、音楽を学ぶ上で原点ともいえる室内楽を研究し、アンサンブル感覚を磨くことで、学生間の音楽的交流が活発に行われ、豊かな音楽性が育まれると考え、自発的な室内楽への興味を喚起させるためのよりよい環境を整備し、高度で専門的な室内楽研究を望む学生に対しても細やかなサポートをする体制をとっています。古楽
学科・専攻概要
本専攻では主に、バロック時代の音楽を中心とする1500年代半ばから1800年頃までの音楽を、その時代にふさわしい方法で演奏することを学びます。作品が生まれた時の響きや奏法に一度立ち帰り、そこを出発点として現代における新たな演奏の可能性を探ることが目的です。そこで、各作曲家の属する時代の楽器や演奏様式について可能な限り研究しながら、作曲家の意図を尊重し、かつ現代にふさわしい演奏様式を見つけていきます。学部ではチェンバロ、リコーダー、バロックヴァイオリンの3専攻を、大学院修士課程、博士後期課程、別科ではバロックチェロ、バロック声楽、フォルテピアノ、バロックオルガンを加えた全7専攻を学ぶことが出来ます。
学科・専攻概要
東京藝術大学が設置された1949年(昭和24年)に指揮科は設置されました。当初は学部3年次から転科する指揮科編入制度をとりましたが、現在は、学部1年次から入学する制度となっています。指揮科では、将来プロフェッショナルな指揮者として、オーケストラ音楽・オペラ・バレエ・オラトリオ等を幅広く指揮する学生を育成しています。また、実技レッスンや各種指揮科授業等を通じて、優れた音楽家、芸術家であるとともに、優れた人格と統率力を備えた指揮者を育てることを教育理念としています。
このため、在学中は、実技レッスンの他に楽曲・楽書の研究等、指揮者になるための様々な知識を学び経験します。そして卒業後は、有能でプロフェッショナルな指揮者として幅広く活動するとともに、「音楽的、芸術的に優れたリーダーシップを発揮し、広く社会に貢献することができる音楽家」となることを大きな目標に掲げています。
学科・専攻概要
本学における邦楽教育は、1879(明治12)年に創設された音楽取調掛にさかのぼります。1887(明治20)年創立の東京音楽学校においても邦楽教育は続けられ、学校創立から49年目にあたる1936(昭和11)年、初めて邦楽科が誕生しました。新制大学への移行期には邦楽科存廃をめぐる議論が全校を揺るがしましたが、音楽学部発足の1年後に邦楽科設置が決定し、全国の芸術大学で唯一の邦楽科として現在に至っています。邦楽科では、三味線音楽(長唄、常磐津、清元)、邦楽囃子、日本舞踊、箏曲、尺八、能楽、能楽囃子、雅楽の各専攻に関する実技と演奏理論を研究、教授して高度な能力をそなえた演奏家を養成しています。
学生は各専攻実技のほかに専攻外の各種邦楽、洋楽、ソルフェージュなどの実技を必修又は選択により履修し、また、実技科目のみならず、演奏理論や関連学科(西洋音楽理論を含む)の授業などを併せて履修することにより、幅広い識見を持った演奏家、あるいは音楽社会人が育つようにカリキュラムが組まれています。
卒業後は、演奏家として、また、教育者・指導者として各分野の第一線で活動する者が多く、演奏実技や演奏理論をいっそう深く研究するために、大学院に進学することも可能です。
なお、教育職員免許状の取得を希望する者には、入学直後、ピアノ実技の学内選考試験を実施するので準備が必要です。
学科・専攻概要
楽理科は、音楽研究の学である音楽学(西洋音楽史、日本・東洋音楽史、音楽民族学、音楽美学など)を研究・教授し、将来、音楽の学問的研究およびそれに関連した仕事にたずさわる人材の養成を目的としています。本学科が設置されたのは、東京音楽学校(1887年創立)が東京藝術大学音楽学部になった1949(昭和24)年ですが、東京音楽学校の前身である音楽取調掛(1879-1887)は諸音楽の調査研究を事業の柱とし、当時の伝習科目には実技の他に「本邦及欧洲音楽史」「音楽理論」が含まれていました。また、東京音楽学校のカリキュラムにも「音楽史」「音楽理論」「審美学」などが置かれ、音楽の歴史や理論・哲学的側面にかかわるこれらの科目がすでに音楽の専門教育に不可欠のものであったことがわかります。学科名に冠した「楽理」という語は、当時まだ「音楽学」という語が一般に馴染みがなかったために、声明の世界で古くから用いられてきた語をあてたものといわれています。学科設置時は、西洋音楽史と音楽理論を中心としたカリキュラム構成でしたが、時代の変化にしたがって音楽民族学や日本・東洋音楽史の専門科目が追加され、幅広い視点や方法で音楽に対峙する現在の教育研究体制が整えられました。
現在の楽理科の授業内容は、音楽学専門科目の講義・演習を中心に広く音楽の各分野にわたり、外国語の習得も重視されています。また、音楽の実技や音楽理論も必修とされ、本学の特色である音楽の実践に密着した研究が要求されます。
なお、楽理科の大学院教育(修士課程・博士後期課程)は、音楽文化学専攻の音楽学研究分野として行われます。
学科・専攻概要
音楽環境創造科は、従来の枠をこえた観点で音楽芸術の創造と、音楽・文化・社会の関わりについて強い関心を持ち、音楽を中心とした新しい文化環境創造を志す人材の育成をめざし、2002年に設立されました。現代社会では、領域を越えた感性、知識、表現技術を活用できる人材が求められています。本学科では、テクノロジーや社会環境の変化に柔軟に対応し、領域横断的な発想を具現化できる能力を養うべく、理論と実践の両面から教育・研究に取り組んでいます。
具体的には、
・音楽や音響に関する研究
・映像、身体、言語、空間、メディアなど、音楽に隣接する表現分野の研究
・コンピュータによる音響作品の創作や、映像、身体表現、メディアのための音楽制作
・アートマネジメントや文化社会学、文化研究
など、芸術と社会の関わりに関する研究を通じて、芸術やそれを取り巻く環境を総合的に研究することを基本としています。
この学科を卒業した学生は、新しい芸術創造や芸術運営の現場はもとより、さまざまなメディアや企業、研究・教育機関、行政、NPOなど広く社会全般で活躍することが期待されます。
施設
開架閲覧室
音楽の専門書、参考図書をはじめ、楽譜、マイクロフィルム、レコードなどを所蔵し、レポートや卒業論文、博士論文などの作成に、また個人の研究に利用できる音楽学部の学生・教員の研究施設です。視聴室
個人の研究のためにCDやレコードを聴く施設です。音響研究室
室内音響や電子音響の研究、録音・録画方法の研究、楽器や音声の音色・ピッチに関する研究などを行う施設です。録音室、音響実験室、楽器研究室、AV実習室、内外の音響学会誌を揃えたゼミ室が付設されており、前述の研究の場として利用されています。小泉文夫記念資料室
主に音楽民族学の研究資料を整理保管、研究する施設です。資料の大半は故小泉文夫教授が世界数十ヶ国の現地調査で収集したもので、諸民族の楽器700余点をはじめ、書籍、楽譜、録音録画資料を観覧、閲覧できます。学外の方もご利用いただけますが、予約が必要です。大学史史料室
大学史史料室は、音楽取調掛、東京音楽学校、東京藝術大学音楽学部で作成された公文書等の大学史史料と、ご関係の皆様からの寄贈資料を保存し、公開してご利用いただくための施設です。シンクタンク機能・社会発信室
シンクタンク機能・社会発信室は、若手音楽家・研究者が研究や実践の成果を社会に発信していけるよう支援する部署として、主に2つの活動を行っています。1.リソース:本学学生が該当する活動支援・募集情報の調査と公開
2.イベント:各種ワークショップ、特別講座等講演会の実施
アートリエゾンセンターは、平成18年秋、千住キャンパスが開校した際に設置された音楽学部の新しい組織です。これは、その名称《Art=芸術、Liaison=連携、Center=組織》が示すとおり、芸術に関わることによって、あるいは芸術をとおして、社会や人が連携・協力しながら有機的に結びついていくための活動を推進するためのセンターとして位置づけられています。
ここでは、千住キャンパスで教育研究に携わる教員が核となり、音楽学部が有する人的リソースを活用しながら、足立区をはじめとする学外との連携企画について、その立案・調整・実施を担いつつ全般的なマネージメント業務を行っています。
ここでは、千住キャンパスで教育研究に携わる教員が核となり、音楽学部が有する人的リソースを活用しながら、足立区をはじめとする学外との連携企画について、その立案・調整・実施を担いつつ全般的なマネージメント業務を行っています。