モバっちょ


大学は、未知との出会いの場
中村 友哉(なかむら ゆうや)
株式会社アクセルスペース 代表取締役 CEO

あなたはなぜ、東大を目指すのか。もしこの問いに臆することなく答えられるのだとしたら、大学に入ってやるべきことも明確なはずだ。ぜひ目標に向かって邁進してほしい。だが、実際には答えに窮してしまう人の方が多いのではないか。成績がいいから、親が東大出身だから、親友が目指しているから―。東大で学ぶことは本来手段であるべきなのに、東大に入ることが目的になっているではないか!いや、東大を目指すみなさんなら、そんなことは言われなくてもわかっているはずだ。

 大丈夫。偉そうにそんなことを言う私だって、高校時代にそんな質問には答えられなかった。でも今、自分のやりたいことで起業し、充実した人生を送れている。だから、東大を目指す理由をうまく説明できなくても、心配しなくていい。重要なのは、東大に入ることができた時、そこで何をするかだ。私の体験を紹介しよう。

 高校では化学が好きだったので、大学では化学系統の学科で学んで、どこかの企業に就職するのかなと漠然と考えていた。だが、大学の化学の講義でつまずいてしまった。幸い東大には進学振分け制度があるので、途中で進路を変えられる。何を目指すべきか悩んでいるところに出くわしたのが、学生による超小型人工衛星開発プロジェクトだった。人工衛星を学生が作るだって!?もともと宇宙ファンではなかったが、自分の作ったものが宇宙に行くなんて、工学を学ぶ一人として、考えただけでゾクゾクした。即座に航空宇宙工学科への進学を決意、念願のプロジェクトに関わることができた。結局、博士課程修了まで衛星開発一筋の大学生活を送ることとなった。その後、やはり超小型衛星開発に関わりたいという思いが強く、宇宙ビジネスなど誰も信じていない時代にアクセルスペースを起業、運にも助けられながら、会社は間もなく12年目に突入する。これまで会社として5機の超小型衛星を開発、実際に宇宙に打ち上げ、運用に成功している。うち1つは、宇宙航空研究開発機構(JAXA)から受託した衛星だ。

 あえて言おう。大学を、勉強や研究をしに行くところと思ってはいけない。みなさんは令和の時代に大学に進もうとしているのだ。これだけ情報化が進んだ現在、知識を得るだけならインターネットで十分だろう。大学は、自分の将来を決定づけるものとの出会いの場と思うべきだ。世界中からあらゆる人が集まり、あらゆる研究が行われ、あらゆる活動が展開される場所。それが大学なのだ。未知との遭遇が、自分の新しい可能性を切り開く。だから常にアンテナを張り、自分が心動かされるものを見つけよう。あなたの目指す東大には、きっとそれが転がっている。