医学部

前期課程の科類との基本的対応関係:理科三類(医学科)・理科二類・理科一類(健康総合科学科)

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患者さんを全人的に治療する医療人を育成しヒトの生命システムを解明し 新しい医学・医療を開拓する それが医学部

 医学部というと皆さんはどのようなイメージを思い浮かべますか。白衣を着て聴診器を持ったお医者さんの姿でしょうか。それとも、実験室で試験管をふっている研究者でしょうか。医学というものは皆さんの予想を越えて、非常に幅の広いものです。医学は科学的な研究方法によって、ヒトの病気の治療と健康の増進に寄与することを最終目的とする学問分野です。そのためには対象とする分野は分子や細胞のレベルから臓器・個人のレベルを越えて、社会あるいは全世界を相手にするところにまで拡大しています。
 医学部の大きな部分を占めるのは臨床医学です。医学生の多くは臨床医をめざして勉強をしています。臨床医学においては、究極の対象は患者さんという一人の人間です。もちろん分子レベルの知識や臓器についての深い理解は必要ですが、対象は自分と同じように人格を持った存在であることを片時も忘れてはなりません。自分自身と同じ人格を持った患者さんに、病気からの快復の手助けをするのが臨床医の役目です。医学は着実に進歩していますから、高度の知識や技術で患者さんが病気から快復するのに大きな力となることができます。それが臨床医として最も喜びとする所です。しかし、後で述べるように病気というのは、ときに強大な力となって私たちの運命を左右し、医学はそれに対して無力である場合もあります。そのような場合には、病気のメカニズムを解明し新しい治療法を開発することにより、将来の患者さんの病気に立ち向かう準備をすることができます。ただし、それも常に成功するとは限りません。ついには死にいく存在であるわれわれの仲間として、患者さんの誇りをまもっていくのも臨床医の務めといわなければならないでしょう。
 医学の目標の達成のためには、分子や細胞のレベルでの研究は必須です。かつて細菌の研究が医学の最先端を走っていた時代には、病原菌のサイエンスは飛躍的に進みましたが、フレミングによるペニシリンの発見により感染症が原理的には克服可能なものであることが示されたのは、それから50年も後のことでした。現在は分子生物学が医学研究の中核となっています。その成果が実際の臨床医学に威力を発揮するまでには、まだかなりの時間を必要とすると予想されています。
 このように医学に大きく寄与するためには、遠回りのようにみえても基礎的な研究は必須であり、また重要です。基礎研究においては生物現象を分子のレベル、細胞のレベルでとらえることが必要であり、また最近では遺伝子に操作を加えて、分子レベルの変化が個体の形の形成や行動にどう影響するかという、分子から個体レベルに至る研究が盛んになってきています。
 一方、医学の領域には社会、ひいては世界を相手にしなければならない広い領域もあります。このような分野は社会医学と呼ばれています。今後、疾病構造の変化、人口の超高齢化の問題、産業廃棄物と健康障害の問題、先進国と発展途上国との健康格差の問題等、社会医学の研究の必要性はますます増大していくと考えられます。また、社会の変化とともに看護教育の改革が進行しており、医学部においても高度の看護教育を担える人材の育成に力を入れています。
 以上のように、医学部の扱う対象は分子から世界に及ぶことがおわかりいただけたと思います。
 もう一つ、医学の特徴をお話しします。それは医学には終わりがないということです。戦前には感染症による死亡が多く、平均寿命は50歳にも満たない状態でした。抗生物質の発見により感染症の大部分が解決されると、高血圧性脳内出血を中心とする脳卒中による死亡が第1位になりました。高血圧の治療や脳卒中の治療の進歩により、脳卒中による死亡が減少するとともに、今度はがんによる死亡が第1位になってきました。この傾向は現在でもつづいています。もしがんによる死亡を減少させる画期的な治療法が開発されますと、現在死因の第2、3位を占める動脈硬化性の脳梗塞や心筋梗塞が大問題となるでしょう。それも克服されたとしますと、アルツハイマー病を中心とする老化の問題が立ちはだかってくるでしょう。すなわち、一つの問題の解決が、つぎの難問の登場をうながすのが医学の大きな特徴なのです。
 皆さんの中から、医学に興味を持って病気との闘いに参加される方がおおぜい生まれることを希望いたします。
 

先端医療をリードする附属病院が優れた臨床教育の場

 附属病院では、38の診療科と、診療や臨床研究を支える部門があり、1日平均して約900人の入院患者さん、約2,400人の外来患者さんの診療と、新しい治療法や診断法の開発が行われています。医学科の5年生、6年生になるとほとんどの実習は附属病院で行われます。また他学部と同じ本郷キャンパスにある地の利を活かして、他学部などと共同で新しい医療を開発する研究が日夜行われています。


医学教育と研究を支える多様な附属施設

 医学教育国際研究センターでは医学教育の方法の開発や普及、発展途上国への医学教育支援を行い、疾患生命工学センターは工学と臨床医学や基礎医学との融合領域を研究し、国際交流室と医学図書館は留学生を含め学生の日常生活と学習環境をバックアップする、グローバルナーシングリサーチセンターは文理融合型の最先端の看護学研究に、理工学・人文社会科学領域の研究者と共にとりくむ等、多彩な学部附属施設が充実した医学教育と研究を支えています。


MD研究者育成プログラム、Ph.D.-M.D.コース、臨床研究者育成プログラム―明日の医学研究者を目指して―

 医学部では次世代の基礎医学・臨床医学研究者を育成する試みが活発に行われています。MD研究者育成プログラムは1学年およそ20〜40名の学生が参加してゼミ形式の少人数育成を受け、基礎研究室での研究活動や学会発表・海外短期留学等を行います。学部での研究成果は修了論文とし、卒業後または医師臨床研修の後に博士課程大学院へと進学します。
 より早期に研究者への道を進みたい学生のためにはPh.D.-M.D.コースがあります。ここでは医学部の2年または3年の医学教育を終えた後、直接博士課程の大学院に進学します。
 臨床研究者育成プログラムは、大人数を対象とした講義形式のレクチャーコース、少人数での抄読会、学会への参加などを通して医学における臨床研究の重要性を学び、臨床研究者としての考え方の基礎を身につけることを主眼としたプログラムです。


世界をリードする基礎医学研究

 医学部での基礎医学研究は、神経科学、免疫学、がん、細胞生物学などの研究が盛んであり、また、病気の発症のメカニズムや新しい治療法の確立へと応用可能な基礎研究が精力的に進められています。これらの分野はいずれも国際的に競争の激しい分野ですが、東大医学部の基礎医学は世界のトップレベルにあると言われています。実際、毎年多くの論文がネイチャー、セル、サイエンスを初めとする雑誌に掲載され、また、本学の教員の中にはこうした雑誌の編集者になっている人もいます。


健康総合科学科について

 医学部には、医学科と共に健康総合科学科があります。健康総合科学科は、多様な学問的アプローチで、高度に複雑化した現代社会の健康問題を解決する専門家・研究者を育成します。健康とは何か、保健医療は何をなすべきか、その最適解に到達すべくイノベーティブにとりくんでいます。生物学的人間(ヒト)と環境との相互作用に着目する環境生命科学、社会を構成する人間(人)全体から捉えてアプローチする公共健康科学、生活している個人や集団(ひと)の健康課題に具体的な支援を提供するための看護科学の3専修があり、交流しつつ学習を進めます。看護科学専修の卒業生は看護師資格の取得が可能です。

医学科(必修科目)

・解剖学
・生理学
・生化学・栄養学
・病理学
・薬理学
・衛生学
・微生物学
・法医学(医事法制を含む)
・免疫学
・公衆衛生学
・放射線基礎医学
・寄生虫学
・人類遺伝学
・統計学
・健康管理学
・消化器内科学
・循環器内科学
・呼吸器内科学
・アレルギー・リウマチ内科学
・神経内科学
・血液・腫瘍内科学
・糖尿病・代謝内科学
・腎臓・内分泌内科学
・老年病学
・心療内科学
・感染症内科学
・外科学
・脳神経外科学
・胸部外科学
・整形外科学
・産科学婦人科学
・小児科学
・眼科学
・皮膚科学
・泌尿器科学
・精神医学
・耳鼻咽喉科学
・放射線医学
・麻酔学
・形成外科学
・臨床検査医学
・口腔外科学
・小児外科学
・救急医学
・輸血学
・臨床薬剤学
・リハビリテーション医学
・総合診療学
・地域医療学
・臨床研究総論
・医療情報学
・医学序論
・実験動物資源学
・医用工学基礎論
・感染制御学
・基礎統合講義・基礎臨床社会医学統合講義
・東洋医学
・社会医学
・臨床統合講義
・臨床導入実習
・手術部感染対策実習
・フリークオーター
・チュートリアル
・エレクティブクラークシップ
・医学英語T
・医学英語U
・医療倫理学
・臨床研究
・医療安全
・医療機器管理学
・病態栄養治療学
・緩和医療学
・検診学

健康総合科学科(3専修共通必修科目)

・健康総合科学概論
・科学論文・表現技術
・健康総合科学英語T
・解剖学
・薬理学・毒性学
・栄養学
・生理学
・生命科学・ゲノム学T
・人類遺伝学T
・生命科学実習T
・免疫と生態防御
・環境と健康
・疫学
・生物統計学
・生物統計学実習
・国際保健学
・人類生態学
・社会と健康
・生命・医療倫理T
・健康心理学
・健康科学調査実習
・感染症
・病態疾患論
・看護学概論
・基礎生命科学(文系必修)
・卒業論文
 
●医学科(3〜6年)
●健康総合科学科