農学部

前期課程の科類との基本的対応関係:理科二類・理科一類

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人の営みを支える食料、資源、環境、生命について学び、未来を考える科学、それが農学です

 農学部では、人類が生きていくために必要な食料、資源、環境、そして、その中での植物、動物、微生物等の生物と人類との関わり合いについて、広く深く学び、地球環境の保全と社会の持続的な発展に貢献できる人材を育成していくことを教育の目標としています。それはSDGs(持続可能な開発目標)の達成を後押しすることにもつながっています。
 人が生きていくために最も重要なことは、まず食が足りていることです。最近の人口推計では、世界の人口は、2060年には約100億人を超えていると予想されていますので、今後、食料の安定供給がますます大きな課題になります。農学部では、このような食の課題の解決に向けた研究を推進しています。例えば、植物の生長効率や穀物の収穫量の向上、病害虫や環境変動に強い耐性を持つ作物の開発、家畜の感染症の予防技術開発、水産動物の養殖効率の向上、食料生産や加工への微生物や酵素の利用技術の開発、さらに農業や地域の経済と発展、食の安全と安心、そして食と健康等の観点に基づく研究を行っています。
 また、近年、地球環境の保全が強く求められており、このことは安定した社会の持続的な発展のためにも重要です。20世紀には、石油や石炭等の化石資源を利用することで便利で豊かな社会を築いてきたと誰もが感じていました。さらに原子力の利用により無尽蔵とも思えるエネルギーを手に入れたと人々は信じていました。しかしながら、石油資源の安定確保や化石資源の利用による大気中の二酸化炭素量増加への懸念、さらに原子力利用の安全性への懸念等によって、今、地球環境の保全や社会の持続的な発展に向けた新たなプラットホームを構築しなければならないと人々は考えています。
 このような中で、農学はさまざまな課題の解決に貢献する責務を担っています。例えば、森林が大気中の二酸化炭素吸収源としての機能を発揮するために不可欠な健全な森林の育成と持続的な森林経営に必要な技術とシステムを開発することは農学の重要な課題の一つです。また、生物が生産する有機資源であるバイオマスを利用し、食の安定確保だけではなく、人々の生活に必要なさまざまなマテリアルとエネルギーを得るための新技術を開発し、これを社会普及することも農学の重要な使命です。
 農学部は、本郷地区の弥生キャンパスにあります。ここは弥生式土器が発見されたことで知られる有名な弥生の丘です。緑が多く、木立の中に、木造のオーディトリウムやギャラリー等の素敵な建物もあり、四季の移り変わりの美しい、落ち着いたキャンパスです。農学部正門横のギャラリーの前に、ハチ公と、その飼い主で我が国の近代農業の礎を築いた一人である上野英三郎先生の銅像があります。この人と動物の触れ合いの姿を表現したものですが、生きものがお互いを支え合う大切さを同時に感じ取る人も少なくないでしょう。このような感性を持って、地球、生命、人の未来を考える農学部は、皆さんを心からお待ちしています。
 

広く、そして深い学びを実践する 独特の教育カリキュラム

 農学は、生命科学から生物資源学、環境科学、工学、経済学、社会科学まで、広範な学問分野が有機的に結びついた総合科学と言えます。これらの学問を幅広くかつ効率よく学ぶために、農学部では3つの課程を設けています。そしてその課程の下にある専修において、各専門分野での深い学びを実践するための独特な教育カリキュラムを編成して教育を行っています。
 第1の応用生命科学課程には、生命化学・工学専修、応用生物学専修、森林生物科学専修、水圏生物科学専修、動物生命システム科学専修、生物素材化学専修の6つの専修を設けています。また、第2の環境資源科学課程には、緑地環境学専修、森林環境資源科学専修、木質構造科学専修、生物・環境工学専修、農業・資源経済学専修、フィールド科学専修、国際開発農学専修の7つの専修を設けています。さらに、第3の獣医学課程には6年制の獣医学専修があります。農学部への進学が内定すると、2年生の後半には「農学総合科目」と「農学基礎科目」を通して農学での学びのプラットホームを構築します。続いて、3年生になると「課程専門科目」での講義と「専修専門科目」での実験、実習、演習授業を組み合わせて履修し、各分野で農学の学びを深めます。これらと併行して、「農学共通科目」でのリベラルアーツ教育を通して、農学に携わる人としての素養を高めていきます。さらに、4年生になると農学を担う研究者や社会人へのキャリアパスとして「専修専門科目」での卒業論文や「農学展開科目」等を通して、自ら考えて行動する力を身につけます。


農学部が保有する多彩な附属施設でのフィールド体験学習

 農学部は東京大学の中で最大の土地保有者であり、多彩な附属施設を全国各地に保有しています。農学部にとって、これらの附属施設は教育や研究のための貴重なフィールドキャンパスなのです。北は北海道の富良野から南は愛知まで、7カ所にある演習林の総面積は、実に東京都23区の半分の面積に相当します。牧場や水産実験所は、それぞれの専門分野で大切な役割を果たしており、また西東京市にある生態調和農学機構では、耕地・緑地・林地におけるフィールド教育研究を行っています。
 農学部に進学したすべての学生は、どの専修に所属しても、3年生のフィールド実習にいずれかの附属施設を活用しています。4年生での卒業論文研究に附属施設を利用している学生も少なくありません。また、前期課程の1年生や2年生全体を対象とした教育カリキュラム「全学体験ゼミナール」でも、農学部の附属施設がフィールド体験学習の場を提供しています。
 人類の存続は、生態系のもつさまざまな機能によって支えられています。食料の生産だけではなく、気象の安定化、水資源の安定確保、環境保全、生物多様性等の多種多様の生態系の機能に関するフィールド教育研究の拠点として、農学部の附属施設の重要性は時代とともに増しています。


ラボやフィールドをベースに基礎科学と応用科学のバランスのとれた教育研究

 農学が目指すところは、人類の幸福と地球上の生物や環境の保全・向上の実現です。その目的を達成するために、最先端の基礎科学を極めつつ、その成果に支えられた応用科学による解決を常に目指しています。例えば、食の安全確保と人間の健康向上、生物多様性の保全循環型バイオマス資源の利活用、東日本大震災からの復興などは農学部の重要な教育研究上のミッションです。
 農学部キャンパスで行われているラボ(実験室)とフィールド(試験地・現地)における活動は、教育研究の魅力を高めています。ラボ型研究室では実験動植物や培養された微生物と向き合いながら日夜実験に取り組んで世界の最先端の研究成果を上げています。フィールド型研究室では、東京大学が誇る100年を超える試験地で実験観測を続けたり、地球の奥地に分け入り、大海原を駆け抜けて現地で試料を採集したりするなど、世界の最前線での活動に励んでいます。また、ラボとフィールドが融合した研究室も数多くあります。これらの研究室は互いの特長を補完し合いながら、農学に課せられた課題の解決に向けた取り組みを進めているのです。
 ラボとフィールドのインターラクション、そしてフィードバックにこそ、農学ならではの醍醐味が存在しています。農学部での教育研究を通じて、多様な学問、多様な生き様を体感することができます。それは農学部が幅広い数多くの専修や研究室から構成されるからで、人類社会への利活用と共生の観点から生物・生命活動を解明するため、自然科学から社会科学までの学術的基礎がフル装備されているのです。


世界と向き合う農学で未来への第一歩を踏み出す

 国連は2015年の「持続可能な開発サミット」において、「持続可能な開発目標(SDGs)」で17の目標を定めました。そこで謳われている持続可能な開発とは、「将来の世代がそのニーズを充足する能力を損なわずに、現世代のニーズを充足する開発」と定義されています。
 持続可能性は、まさに農学が追究してきた理念であり、SDGsで掲げられた目標の達成に向けて、多くの分野に農学は直接、間接関わることになります。もしかするとそれは人間中心主義的な理念に感じられることがあるかもしれませんが、しかしそうではありません。農学部での教育研究に触れたならば、生きとし生けるものすべてへの暖かな眼差しに満ちあふれていることに気づくはずです。
 農学部では、学生の皆さんと共に、人類の直面する食料や環境における課題を解決するために世界を視野に入れた教育研究を進めていきます。例えば農業・資源経済学専修では、海外からの客員教員が最先端の海外農業や政策を英語で講義する科目を用意し、また国際開発農学専修では、海外実習や英語表現法等の授業科目を設けて国際教育を実践しています。さらに、獣医学専修においては国際標準を視野に入れた教育カリキュラムを実施するとともに、海外の大学との協定に基づく学生交流も推進しています。

農学総合科目

・人口と食糧
・生態系の中の人類
・土壌圏の科学
・水の環境科学
・環境と景観の生物学
・生物の多様性と進化
・環境と生物の情報科学
・化合物の多様性と生理機能T、U
・バイオマス利用学概論
・森林資源と木材利用
・食の安全科学
・放射線環境学

農学基礎科目

・基礎有機化学
・基礎分析化学
・基礎微生物学
・分子生物学
・基礎生物化学
・生物統計学
・植物生理学
・細胞生物学
・遺伝学
・植物分類・形態学
・昆虫学
・動物生態学
・森林環境科学汎論
・動物分類学
・植物生態学
・木質構造科学概論
・流れ学
・情報工学
・基礎高分子化学
・基礎物理化学
・農業資源経済学汎論
・農業史概論
・ミクロ経済学
・動物生理学
・応用動物科学概論

農学共通科目

・農学リテラシー
・環境倫理
・生命倫理
・技術倫理

農学展開科目

・食と人間
・食と健康システム演習
・農業環境の放射線影響
・バイオマス利用研究特論
・生物配列解析基礎
・ゲノム情報解析基礎
・バイオスタティスティクス基礎論
・構造バイオインフォマティクス基礎
・フードクリエーションサイエンス
・フロンティアライフサイエンス
・生態統計学
・サイエンスコミュニケーション
・サイエンスコミュニケーション演習
・自然再生事業モニタリング実習
・農学現象の数理科学的理解
・ワン・アーソロジーT、U、V
・Basics for Science Communication in English
 
●応用生命科学課程
生命化学・工学専修
応用生物学専修
森林生物科学専修
水圏生物科学専修
動物生命システム科学専修
生物素材化学専修

●環境資源科学課程
緑地環境学専修
森林環境資源科学専修
木質構造科学専修
生物・環境工学専修
農業・資源経済学専修
フィールド科学専修
国際開発農学専修

●獣医学課程(3〜6年)
獣医学専修